シリーズ研究講演会 「薬づくりの新しいR&Dモデルを探る」≫≫背景解説へ

 第1回「p-Medicine時代の薬づくり」

日 時: 2013年6月20日(木) 13:20-17:15
会 場: 株式会社シード・プランニング
(東京都文京区湯島3-19-11, 湯島ファーストビル4F)会議室 ≫≫地図
世話人: 神沼二眞(サイバー絆研究所)、多田幸雄(東京大学創薬オープンイノベーションセンター)、堀内正(慶応義塾大学医学部)
開催者: キャドゥアライアンス CADU Alliance(サイバー絆研究所)
共 催: CBI学会、オミックス医療研究会
参加費: ¥5,000(※)
     ※ ICAの会員、CBI学会の会員、オミックス医療研究会の会員は無料です。
     ※ ICA主催の2月13日の研究講演会の有料参加者は、3,000円です。
◆お申込みは、こちらのフォームからお願いします。

◆◇◆交流会のご案内◆◇◆
交流会を兼ねた集会「ICA夏の集い」を開催します。
時 間: 18:00〜 (17:30より受付)
会 場: 古拙(こせつ) ホテル江戸屋B1F TEL:03-3835-4992 ≫≫地図
(※会場が変更になりました:講演会会場の隣のビルです)
参加費: ¥5,000

◆お問い合わせは、こちらからお願いします。
開催趣旨:
  現在、「アカデミック創薬」や「創薬への国の積極的な関与」に関する話題が増えています。シリーズの最初であるこの講演会では、まず、こうした動きの中で研究されている方々に、現在の仕事とこれからの展開について、お話をしていただきます。ここでは、初期の計算化学の技法を実際の薬づくりに応用されたことから、現在の大学でのスクリーニングセンターに至るまでの30年近くの体験を紹介していただきます。次に、厚生労働省傘下2つの研究機関のリーダー研究者に、創薬を支援する立場からの現在の研究と、Regulatory Science の立場からの創薬支援研究について、将来のビジョンを含めて、研究者の立場からお話しいただきます。

  後半では、DNAシーケンサーと随伴するオミックスの猛烈な進歩が開く、次なる医療として注目されるp-Medicineに関わる話題を提供します。p-Medicineとは、予測的predictive、予防的preventive, 個別的personalized, 参加型participatoryというpから始まる形容詞を付けた医療を意味する言葉です(P4やP5 Medicineとも言われています)。この視点から医薬品開発について考える第一歩として、「GWASからGETへ」という新しい潮流を紹介します。GETとは、病気になるというような性質Traitは、遺伝子(DNA配列)だけでなく、運動、食事などを含めた環境Environmentと相互関係で決まる G x E = T(すなわちGET)という考えを表します。

   GETはゲノム解読の新しい基盤概念として注目されています。さらにp-Medicine時代に期待されるEmpowered Consumersの概念と、実践課題として浮上してきている「三次予防」について、Proactive Professional Consumers(PPC, 進取の気質に富んだ専門家である生活者)からの視点を交えて紹介します。

   「p-Medicine」「GET」「三次予防」「PPC」などの用語は、いずれも近未来の医療を理解する重要なキーワードになると思います。これについて気軽に討議していただく機会を提供できたらと考えております。得がたい機会だと思いますので、奮ってご参加下さい。
プログラム

第1部 創薬への情報計算技法の活用―これまでとこれから ≫背景資料1(PDF)
    座長:堀内 正(慶応義塾大学医学部)、湯田 浩太郎(インシリコデータ)

  13:20-13:25   はじめに
  13:25-14:05   ひとつの薬を臨床に届けるまでーある抗がん剤を例として
      多田 幸雄(東京大学創薬オープンイノベーションセンター)
  14:05-14:50   医薬基盤研における創薬支援データベースの開発
      水口 賢司(医薬基盤研究所バイオインフォマティクスプロジェクト)
  14:50-15:20   新しい計算毒性学への期待:iPSCとインシリコをつなぐ
      石田 誠一(国立医薬品食品衛生研究所薬理部)
  15:20-15:45   討議および休憩
       

第2部 p-Medicine時代の薬づくり ≫背景資料2(PDF)
    座長:坂田 恒昭(塩野義製薬)

  15:45-16:30   GWASからGET(Gene x Environment = Trait)へ
      田中 博(東京医科歯科大学難治疾患研究所 ゲノム応用医学部門)
  16:30-17:00   オミックスと三次予防
      神沼 二眞(サイバー絆研究所)
  17:00-17:15   討議と次回からの予定
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背景解説
シリーズ研究講演会「薬づくりの新しいR&Dモデルを探る」について
  現在、iPS細胞への創薬への応用や、アベノミックスの三番目の矢としての成長産業づくりからの関心もあって、医薬品の研究開発と産業化には、かつてなかったほどの熱いまなざしが注がれています。しかし世界的に見ると、製薬企業を取り巻く環境は厳しく、欧米では、薬づくりのR&Dモデルを抜本的に見直す動きが盛んになっています。

  そのひとつは、Translational ScienceあるいはRegulatory Scienceを使命とする国の研究機関、あるいは国が支援して設立した研究機関を基盤とした複数のアカデミアと製薬企業、あるいはSolution企業を結ぶオープンイノベーションを目的としたネットワーク(コンソシアム)の構築です。また、半世紀以上変わらなかった安全性(毒性)研究の改革です。いずれの場合も、ゲノム解読と同じように加速度的な進歩を続けているICTの活用を前提としています。ICTの活用と言えば、これまでは、個々の問題解決に応用するという考えが強かったのですが、現在は、ウェット研究者のパートナーとして、研究開発のすべての局面で、ウェット研究者を支援し、その仕事の効率と効果を高める基盤的な「環境」を構築することに努力が拡大されています。日本でも個々の課題に取り組んでいる優れた研究者や研究グループはありますが、こうした使命の遂行を全体的にサポートする仕組みづくりの発想が欠けており、それが我が国の創薬環境のアキレス腱になっています。

 このシリーズ講演会の世話人たちは、主に計算機(現在のICT)の活用を基盤とした創薬支援の情報交換や交流に長く関わってきましたが、情報計算技法のような分野から医薬品の研究開発に興味をもってくださる方々が、製薬企業の行動原理や薬という製品が世に出るまでの仕組み、とくに規制について、あまりご存知ないことを知って、こうしたことを記述した本(T. Bartfai & G. V. Lees, Drug Discovery from Bedside to Wall Street, Elsevier, 2006)の翻訳を思い立ち、これを「薬づくりの真実」として、CBI学会より刊行しました(≫訳本のサイト)。この訳本の在庫もほとんどなくなってきたこともあって、今回、同じような視点から、この分野のその後の変化や、現在の我が国で起きている新しい動きを踏まえて、イノベーションにつながるような新しいR&Dのモデルを探ってみたいと考えました。もちろん、その主な関心は、情報計算技法の新しい課題の探索やそれを担える人材をどう育成するかにあります。

 そこで、実際にR&Dに関わっておられる研究者や、経営的な視点から医薬産業に関わっておられる専門家に、現状と近未来について語っていただき、この問題について考察してみることにしました。しかし講師としてお願いしたい方々は、大変ご多忙のため、シリーズのそれぞれの講演会を、テーマに沿って順序立てて開催していくことは、ほとんど不可能です。そこで、お呼びしたい方のご都合を優先して、プログラムを作成することにしました。

 全部で4回から6回ほどと想定しているこのシリーズでは、講師のお話を聞くだけでなく、参加者を交えた意見を交換することで、大いに発想を刺激する効果を期待しております。とくに、Translational ScienceやRegulatory Scienceにおける国の研究所の役割などに関する立場を異にする関係者の自由な討論を期待しております。また、懇親会を含めて、この領域に関心のある方々の、新しい出会いの機会をご提供したいと考えております。あまり他に類のない機会と思いますので、薬づくりに関わっておられる研究者やマネジャーや政策担当者など、幅広い関係者が参加されることを願っております。

シリーズの世話人: 神沼二眞(サイバー絆研究所)
多田幸雄(東京大学創薬オープンイノベーションセンター)
堀内正(慶応義塾大学医学部)
シリーズ企画協力者: 佐々木浩二(アドイン研究所)
坂田恒昭(塩野義製薬)
田中博(東京医科歯科大学難治疾患研究所 ゲノム応用医学部門)
湯田浩太郎(インシリコデータ)
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