シリーズ 「薬づくりの新しいR&Dモデルを探る」
第8回「薬づくりとヘルスケアにおける個人情報の扱い〜その基本的課題」
日 時 |
2015年8月7日(金) 13:00-16:30 |
会 場 |
東京大学医科学研究所1号館1階講堂(東京都港区白金台 4-6-1) |
世話人 |
生島 裕(数理先端技術研究所)、田中 博(東京医科歯科大学)、中井 謙太(東大医科研)、神沼 二眞(ICA) |
開催者 |
キャドゥアライアンス CADU Alliance(サイバー絆研究所) |
後援/共催 |
日本バイオインフォマティクス学会、協賛:日本オミックス医療学会、後援:CBI学会、LODチャレンジ実行委員会 |
参加費 |
¥3,000
※ ICA会員および学生は無料 |
開催趣旨:
薬づくりで大きな経費が掛かるのは、製薬会社のパイプラインと呼ばれる開発過程の後半における、薬候補化合物のヒトへの投与試験(いわゆる治験)である。ヒトゲノム解読による疾患関連遺伝子や疾患関連タンパク質の解析が進み、薬物の標的の探索に患者を含む大規模なヒト集団が必要になってきた最近は、患者や健常者の大きな集団が必要になっている。またゲノムを含む各種の医学的な研究のためのコホート研究にも大きな集団が必要とされるようになってきた。こうしたヒトの大規模集団を扱う問題は、このシリーズの第3回の「社会に開かれた薬づくり」で取り上げられた。また前回(第7回)の「新しい薬づくりと明日の精密医療Precision Medicine」をテーマとした会では、ビッグデータを念頭に置いた視点からの議論がなされている。そこで再認識されたのが、個人データの扱いに関する基本ルールである。
これまで薬づくりで問題になっていたのは、研究の責任者によって、しっかりと管理されたデータである。だが、これから問題となるのは、健康保険の支払いに関係したレセプト(診療報酬)請求業務データや、診療機関が作成した(電子化されたカルテの)診療記録EMR(Electric Medical Record)や、個人がスマートフォンやクラウドに蓄積した健康記録PHR(Personal Health Record)など、いわゆるReal World Dataの扱いである。とくに後者は、いわゆるヘルスケア業界が、進歩が著しい多彩なセンサーを使ったサービスを積極的に展開しようとしているので、すでに大きな課題になっている。
いずれにしても、研究やビジネスの立場からは、匿名化した情報として自由に活用するのが望ましく、漏洩を心配する個人や団体の立場からは慎重にならざるをえない。そこでの基本的な問題は、サービスを受ける者とサービスの提供者のいずれがデータを管理するか、所有するかである。生活者(Consumers)の立場に立てば、ヘルスケアや医療などの個人情報は自分の状態を計測したものだから、自分で自由に使いたいと考えるのが自然である。一方で個人管理では、エクセルや紙ベースで保存することがせいぜいであろう。実際、診療情報は患者が請求すれば入手可能なケースが増えている。けれども例えばCT診断データを見るには専用のソフトウエアが必要になる。したがって個人が自分のデータを専門の組織に委託して管理してもらい、必要に応じて活動するというビジネスが盛んになることも予想される。
こうした問題と機会に対しては、集中と分散、利便性とプライバシー保護とセキュリティの観点からシステム化の方向を探る必要があろう。この会では、欧米各国の動きを専門家に紹介していただき、日本の現状を分析することをめざしている。この会では、できるだけ未来(次世代)のヘルスケアの姿を予見し、現在からそれに至る工程と途中の到達目標(マイルストーン)を明らかにすること(バックキャスティング)を試みたい。そこでは、次回以後に詳しく検討する予定のビジネスの機会についても最初の問題提起行っていただく予定である。
要約すれば、この会は、ビッグデータの視点から、治験やコホート研究の個人データから、診療機関や個人が収集する多様なReal World Dataまでを念頭に置いて、幅広いヘルスケアに関わる個人情報の基本的な課題を明らかにして、対策やビジネスの可能性考える最初の会となることをめざしている。また、いつものように、参加者が議論に参加していただけるように背景資料を事前に用意しておく予定なので、この問題に関心をもたれている医療、ヘルスケア、薬づくり、その他関連する事業に関わっている幅広い研究者や専門家の気軽な参加を期待している。
参考資料:
・シリーズの第3回の「社会に開かれた薬づくり」の発表者資料
・第7回(前回)の「新しい薬づくりと明日の精密医療Precision Medicine」
・「健康情報信託(仮称)」創設に向けた建白書、健康情報システム協議会、2014.
・城田真琴、パーソナルデータの衝撃、ダイヤモンド社、2015.
◆プログラム (休憩時間など、多少の変更がありえます)
13:00-13:15 |
開催趣旨:薬づくりと次世代ヘルスケアにおけるデータと知識 ≫≫中間報告
神沼 二眞(ICA) |
13:15-14:00 |
ヘルスケア個人情報のあるべき姿
橋田 浩一(東京大学大学院情報理工学系研究科) |
14:00-14:45 |
欧米各国におけるヘルスケア個人情報の扱い
笹原 英司(慶應義塾大学大学院経営管理研究科) |
14:45-15:30 |
「センサー×ビッグデータ」ビジネスの可能性
大田 麻衣(日本政策投資銀行) |
(休 憩) |
|
15:50-16:30 |
パネル討論:日本におけるヘルスケア個人情報の可能性と問題点
モデレーター 田中 博(東京医科歯科大学) |
◆交流会を予定
*時間:17時15分〜(講演会終了後、お店に移動)
*場所:カフェ ラ・ボエム 白金
東京都港区白金台4-19-17(電話:(03)3442-4060)http://www.boheme.jp/shirogane/
*参加費:2,500円(税込・2ドリンク/おつまみ)
◆参加申込みはこちらから ≫≫申込みフォーム
※お問い合わせは、
ICA(サイバー絆研究所)事務局()、または
ホームページ(http://join-ica.org/ica/)の「お問合わせ」よりご連絡ください。