現在の医療の主要な関心と施設と手段は病人であり、病院であり、薬であり、保健制度である。こうしたサービスの大規模な展開は、２０世紀の社会的な発明である。これに対して２１世紀になって関心が高まっているのは、病気になる前の人間であり、健康である。ところが、病気にあらざる人間と健康のためのサービスは、まだ十分成熟していない。ここに大きな、まだ潜在的な需要（Unmet Social Needs）が存在する。

  一方で、ゲノム解読とそれに随伴する技術と情報通信技術（ICT）と不可分に結びついた生物医学と関連科学と関連技術は、猛烈な勢いで進歩し、医療や健康サービスや薬の開発の様相を大きく変貌させている。こうした変化には、イノベーションの機会があり、そこに雇用も生まれてくる可能性が秘められている。

  Unmet Social Needsを発掘することによって、知識労働者の雇用の機会を拡大することをめざすサイバー絆研究所（ICA）では、こうした健康に関わるイノベーションを推進する（Health Innovation Initiative, HII）ためのICTに注目し、この領域の研究者人口を増やすと同時に、そうした専門家たちの職の機会も拡大するための情報交換や研究交流事業を展開している。それが、HII Computing Forum（ハイコンピューティングフォーラム）である。

  HII Computing Forumの活動は、ICAが関与している４つの専門家のための懇談会、研究会のメンバーによって支えられている。