次世代ヘルスケア、超スーパーコン、AI、ディジタルヘルス、Precision Medicine, 腸内細菌叢、機能性および健康食品、参加型ヘルスケアなど、ヘルスケアと薬づくりをめぐる話題づくしの研究集会へのご案内。
本年度、「薬づくりの新しいR&Dモデルを探る」をテーマとするVisionary Seminarシリーズはまだ新しい集会を開催しておりませんが、このシリーズと関連する講演会や研究集会として、ICAが協力しております(社)日本分析機器工業会が開催する大規模な展示会、JASIS2016における9月7日と8日の集会、およびCBI年大会における10月26日のセッションの一つとしての集会を下記にご案内します。ぜひ、参加をご検討下さい。
JASISは、(社)日本分析機器工業会と日本科学機器協会が毎年開催する大きな展示会であり、展示だけでなく、多数の講演会、コンファランス、フォーラム、セミナーなども開催されます。昨年は、その初日の全体の基調講演に、ICAの「薬づくりの新しいR&Dモデルを探る」シリーズの世話人5名が講師を務める共に、1日のフォーラムも開催しました。本年も、初日(7日)の(ライフサイエンスイノベーションゾーンで開催される)基調講演(7日)の企画に協力すると共に、翌日(8日)に、1日の研究講演会を開催します。
ただ、幕張で開催される、この展示会は規模が大きく、非常に多数の講演会やセミナーなどが9月7日(水)−9日(金)の間、同時並行的に開催されますので、個別の課題に関心を持っておられる方が、自分の興味のある集会に参加したり、展示ブースを訪ねたりすることは大変難しいのが実状です。そこで以下では、ICAの活動に関心を持ってくださっている方々を想定して、興味深いと思われる講演などをご紹介します。
また、斉藤元章氏は、医師として放射線科の勤務から、米国に渡って機器開発のビジネスを成功させ、東北大震災を機に日本に戻られて、エネルギー消費(熱発生)の少ない省力化の視点からは、世界1のスーパーコンを開発された経験をもとに、エクサスケールの計算機がどのような未来を開くかを語られると期待されます。その開発哲学は、少人数が密かに介した研究からステルス戦闘機を開発した「スカンク・ワークス」にあると語られているサイトが公開されていますので、ぜひ、これらの資料をご覧になって、講演をお聞き下さい。
・斉藤元章、エクサスケールの衝撃、PHP研究所、2013年
・http://www.pccluster.org/ja/event/%E9%BD%8A%E8%97%A4%E6%A7%98.pdf
・「ステルス戦闘機(スカンク・ワークスの秘密)、1997年(絶版)、Ben R. Rich著」
薬づくりとスーパーコンの活用では、京大で京を使った多くの企業との共同研究チームによるプロジェクトの経験のある奥野恭史氏の話が午後にあります。
その午後には、京大の山中研究室と富士フイルムが昨年傘下に収めたCDI社(セルラー・ダイナミクス・インターナショナル)との連係で、iPS細胞を創薬研究のプラットフォームにするという方向への、CDJ社(セルラー・ダイナミクス・インターナショナル・ジャパン)の早乙女秀雄氏の話が、聞けると期待しています。
このセッションでは、引き続き、ICTの進歩を視野に入れて、蓄積が容易になってきている健康医療情報収集のピッチを早め、さらにそれらを研究者たちが自由に活用できる仕組みをグローバルに構築することによって、ヘルスケアの新しい時代を切り開こうという夢がエーザイの鈴木蘭美氏から語られる期待しています。さらに、我が国の大手製薬会社の研究リーダーの立場から、Precision Medicineの視点を重視した次世代の薬づくりへの展望が、武田製薬の山本 恵司氏から聞けると期待しています。
この午後のセッションの最後には、短い時間ですが、参加者からの質問を入れた討議の時間がとられていますので、薬づくりの関係者は、ぜひ参加を検討下さい。
なお、参加費は無料ですが、JASIS2016への登録者である必要があります。非常に人気が高いようなので、早めに登録手続き(≫≫JASIS)を済ませることを、お勧めします。
本年度のICAは、これまでの「薬づくりの新しいR&Dモデルを探る」を、「次世代ヘルスケアと薬づくり」に視野を拡大し、できるだけ次世代思考の広くかつ新しい話題を取り上げることをめざしています。また研究集会の開催なども、必ずしも独自の開催に拘らず、他の団体での集会の開催に協力したり、相補的な課題を取り上げたりするなど、新しい方向を探っています。
具体的には、これまでのセミナーシリーズを継承した、「次世代ヘルスケアと薬づくり」を課題とする講演会シリーズに加え、「参加型ヘルスケア研究会」の立ち上げと、BioMedPharma&Nutrition(生物医学および薬づくりと栄養学)の領域におけるデータからの知識生成(Data to Knowledge, D2K) をめざした勉強会的な「データサイエンスの会」の立ち上げを目標とした活動を準備しています。
それらの活動の目標は、医療用医薬品のような医師の処方箋を必要とする健康や疾患への対処法だけではなく、食事、睡眠、運動、瞑想、その他さまざまな生活様式(Lifestyle、あるいは生活習慣)によって健康を維持し、疾患に対処しようという参加型ヘルスケアの実践を支援する環境Ecosystemづくりにあります。
参加型ヘルスケアを支えるのは、一般の生活者を対象にした、DTC (Direct to consumers)と呼ばれる新しいサービスであり、遺伝子やゲノムの検査や、微量血液の採取と薬局を介したその分析サービスがその典型です。また10万を越えると推定されるスマートフォンやタブレットPCのアプリケーションプログラム(Apps、アプリ)も、無視できない存在になっています。さらに食事の効果を推測するための、腸内細菌(叢)の分析への関心も急激に高まっています。これらの動きにはPoint of care/Procedureという、患者や生活者のいる場所での検査や対処を可能にすることが期待されています。
ICAが主宰する9月8日のこの研究集会では、こうしたICT/IoTの技術を活用した一般向けのサービスを提供しようとしているビジネス思考の試みと、そうした個人を対象にした健康(および疾患)状態のデータの収集とその活用の先進事例を紹介していただいて、その未来への発展を討議する機会にしたいと企画しました。
そこでは、技術的な課題ももちろん紹介、討議されますが、それらを束ねて参加型の次世代ヘルスケアを先導する関係者のコミュニティ形成の機会とすることもめざしています。すなわち、この集会に参加された方々の出会いから、新しいつながりと活動が生まれることをめざしています。
とくにICAとしては、参加型ヘルスケアの視点から「個人に適した食事を助言するサービス」、すなわちPersonalized Nutrition」に関する具体的な研究コミュニティの立ち上げを、この会で提示したいと考えています。そのために、全体として、人と情報知識の交流をできるだけ促進する、気軽な出会いの機会にしたいと考えています。したがって関連情報は、会議開催直前まで、追加する予定です。
会場である国際会議場(3階 304会議室)は、展示会場と隣接しています。双方とも参加費は無料ですが、展示ブースの見学ができるように、事前の展示会への申し込み手続き(≫≫JASIS)をお願いします。
なお、参加型ヘルスケアは、データからの知識生成をめざした新しい「データサイエンス」を必要とすると考えています。また、個人への適食助言には、人工知能、AIも活用されると予想されています。それらの話題については、今回、背景資料なども用意しますが、10月26日(水)に開催されるICAが準備するCBI学会のフォーカストセッションにも引き継がれて行きます。ただし、この集会への参加は、CBI学会の年大会への参加を前提としておりますので、事前登録など、早めの参加手続きをお勧めします。
関連するフォーラム
基調講演と時間的に重なるが、ICA主宰の9月8日(日)のフォーラムの世話人でもある産総研の根本直氏のメタボリック・プロファイリング研究会が主宰する下記のフォーラムが前日に予定されています。
9月7日(水)JASIS2016 ライフサイエンスイノベーションフォーラム
「分析世界の多次元アプローチ」(http://www.jasis.jp/seminar/ls-rel.html )
9月9日(金)基調講演
最終日の午前には、DNAの配列決定装置(シーケンサー)の進歩を基盤とした臨床医学への応用の現状が、内外の第一線にいる研究者から報告されます。また午後には、老化対策や健康長寿をめざした先端的なサービスや分析技術の話題が提供されます。
特別展示
なお、次世代ヘルスケアや欧州における食のオープンイノベーション(オランダ応用科学研究所TNO)、スマートフォンによる健康情報収集、iPS細胞を含む京大のオープンイノベーションなどの、興味深い展示があります。
以上は、あくでも我々の視点から関心のある発表を紹介したものですが、これ以外にも多数の魅力的なプレゼンテーションが用意されていますので、時間的な余裕をもってご参加下さい。
問い合わせ
JASIS2016に関する問い合わせは、ICA(サイバー絆研究所)では、受け付けられませんが、9月8日のフォーラムに関連する情報については、mail≪at≫join-ica.org に問い合わせ下さい。
(文責:神沼二眞、サイバー絆研究所)