ご存知かも知れませんが、私たちはCBI学会において、長年ネットワークの整備に関わっておりましたが、現在は、CBI学会が株式会社アドイン研究所に設置させていただいている計算機を、より一層有効に活用する方向を探っております。その一つの具体的な計画が、2008年度の末から構想していたThe CBI Work Plazaです。これは、簡単に言えば、ネット上に計算創薬のShow Roomを構築しようという事業でした。
その第一歩は、計算サーバー環境の整備でしたが、財政状況の厳しい中、CBI学会は、昨年度、新しいPC5台を導入しました。その後、私たちのうちの一人(上林)が、そのうちのPC1台を仮想サーバー(群)に、4台を計算用のクラスターとして稼動させるための作業を行ってきましたが、ようやく計算のためのMinimumな環境が整備されてきました。
これは喜ばしいことですが、一方、この計画を推進していた我々のうちの一人(神沼)は、本年度より責任ある立場としてはCBI学会の運営には、関与しないことになりました。しかし、CBI Work Plaza構想には、サイト(コンテンツ)を構築する作業が含まれておりますが、それらはこの計画の発想の基になった広島大学の相田美砂子研究室での科研費の仕事や、東京医科歯科大の田中博研究室でのJSTの人材養成プロジェクトに関連した資料として、かなり作成されておりました。
そこで、今回、これまで「CBI Work Plaza」と呼んでいた事業を、神沼らが新たに立ち上げた非営利学術組織であるサイバー絆研究所(ICA)が推進する、(計算創薬の作業のための情報広場(を構築する)という意味で)“The CADU Work Plaza”と呼ぶプロジェクトに改めるとともに、それを応援する研究者の組織として、この計算創薬懇談会(The CADU Forum)を立ち上げることにしました。
この会のひとつの大きな目的は、計算創薬分野で経験を積んできた研究者の経験知を次の世代に継承することであり、また、計算化学と計算創薬を隔てる深い溝に橋を架けることです。この会はごく気楽な会ですから、興味をもたれた方が参加してくださることを期待しています。
計算創薬懇談会 設立呼びかけ人一同 (20011年7月)
上林正巳(東京工業大学)、神沼二眞(サイバー絆研究所)、多田幸雄(東京大学)、中田吉郎(群馬大学)
計算創薬懇談会(仮称)設立案
1.目的
この会は、
(1)計算創薬の視点から、医薬品の研究開発に関する情報を交換する、
(2)計算創薬に関心をもっている研究者たちが互いに知り合える機会を設ける、
ことを目的としている。
この会は、個人の資格で気軽に参加してもらうことを前提としており、そうした雰囲気の中で、「計算創薬に関わってきた比較的古参の研究者たちの経験知識を、(大学院生を含む)若手研究者たちに伝える機会を提供すること」を、とくに重視している。
この意味では、いわゆる学会や学会の分科会、企業が支援している研究会などに較べて、遥かに自由で、親しみやすい出会いの場となることをめざしている。現在、インターネットの世界では、facebookのようないわゆるSNSと呼ばれる交流サイトが普及し、研究者の間でもResearchGateのような、似たような仕組みが現れている。この会でも、こうしたツールを使うことも視野に入れている。
また、研究者間の交流が効果的になるように、計算創薬の内容を教材のような形式でまとめたり、医薬品開発の企業や研究者とSolution企業の出会いの機会を提供したりすることも、視野に入れている。
この2つのことを同時に実験してみたのが、神沼がCBI学会の事務局から刊行したSolution Guideの作成であった。その後、Monographの形をとったこのシリーズを続けて欲しいという要望はあったが、進歩と変化の激しい領域の解説を部数の少ない印刷物にすることには、限界を感じており、むしろウエブベースのコンテンツにすべきだという、考えがあった。この会は、この考えを実践してみる機会にしたいとも考えている。
なお、この会は、神沼が構想し、準備しているICAのThe CADDDU Plaza(キャドゥ・プラザ)事業の一環である。
2.The CADDDU Plaza事業について
The CADDDU Plaza(キャドゥ・プラザ)事業は、進歩が著しいICT、とくにWWWの技術を活用して、医薬品の研究開発への計算機の応用、すなわち計算創薬の基盤となる情報の提供や情報の交換を行うことを目的としている。具体的には、次のことを主な目標にしている(ここで、CADDDUとは、Computer-Aided Drug Design, Development, and Usageの略であり、The CADU Plazaと略すること場合もある)。
(1)計算創薬の視点から、医薬品の研究開発に関する最新の情報を交換する
(2)計算創薬に関心をもっている研究者たちが、互いに知り合える機会を提供する
(3)医薬品開発の企業や研究者とSolution企業の出会いの機会を提供する
(4)計算創薬を医薬品の研究開発に活用する技法を学べる機会を提供する
この事業は、神沼がCBI学会にThe CBI Work Plazaと呼ぶ事業として提言してきたものである(→ CBI学会の資料 CBI Archive URL)。しかし2011年度より、神沼はCBI学会の運営に関与しなくなったことから、この計画を、神沼個人の事業として再定義し直して、CBI学会からは自由な立場で、取り組むこととした。
The CBI Work Plazaは、もともと神沼が広島大学大学院理学研究科の相田美砂子研究室に滞在していた時に、科研費に応募するために考えた「計算創薬をアカデミアに開放する」ことを目的とした小規模な研究事業を源流としている。また、その構想の中の、「主要疾患の標的に関わる情報基盤」に関するアイデアは、東京医科歯科大の田中博研究室のJSTのオミックス人材養成プロジェクトとの関わりにおいて行った文献情報の収集と分析作業の経験が基になっている。
The CBI Work Plazaのもう一つの要素は、PCクラスターによる計算環境であるが、これについては、CBI学会において2008年度の末に設置した非公式の「サーバー委員会」での検討を経て、昨年度購入したPCを、上林正巳理事が整備してくださっていたものを想定していた。
しかし、サイバー絆研究所(ICA)を事業母体とするThe CADU Plaza事業は、CBI学会を基盤として構想していたCBI Work Plaza事業とは一線を画し、主な教材のコンテンツは、ICAの管理下のサーバーに置き、CBI学会の計算環境は、計算創薬懇談会が後押しする演習などで使用することとした。
3.基盤となるサイトPortal
The CADU Plaza事業の目標の一つは、サイト構築である。このサイトは、神沼とその協力者が管理する、独自のサーバー上に置かれる予定である。神沼にとって、計算創薬懇談会の運営と、Portalの構築とは、互いに関係しあった双子の事業である。
ただし、最初からこの2つの事業を関係づけて展開するのは、難しいので、まずは、神沼とその少数の協力者がPortalのイメージづくりを行い、それとは別に、計算創薬懇談会を立ち上げ、CBI学会の管理下にある計算クラスターを利用できる環境を整備し、然る後に、双方の事業をうまく関係づける、という段階を経る予定である。
Portalの出発点は、The CADU Plazaのイメージづくりであり、コンテンツは二の次である。そこに、アクセスを関係者に限定したResearch Forumが置かれる予定であるが、その関係者は計算創薬懇談会のメンバーと想定している。
4.集いの情報交換サイトCommunity-ware
計算創薬懇談会は気軽な会であるが、複数の人間が集い、共同作業が生まれれば、その運営には、何らかの事務局組織が必要である。神沼は、長年CBI学会の事務局を運営してきた経験から、一般に学会の事務局の運営が、案外、古色蒼然としたのでインターネット時代に十分対応していないと感じてきた。
この経験と、現在続々と台頭してきている新しいウエブ技術や、進歩が続くICTの現状から、より画期的な事務局業務の支援システムづくりに関心をもつようになった。今回、計算創薬懇談会の運営には、こうした新しい時代の業務支援システムを開発して、使用してみる実験も行いたいと考えている。
5.会合
立ち上げ時期の、この会の主要な活動は、相談や学習のための会合である。この会合には、計算創薬に関心をもっている誰もが参加してもらえると考えている。
ただし、この会に対する金銭的な支援は、現時点ではなきに等しいので、会合の費用は、参加者に分担してもらうことを原則にしたいと考えている。
6.会則など
最初は、必要最小限の項目で、活動を始め、活動が活発になったら、必要な項目を補っていくという、ゆるい方式をとることを考えている。
7.世話人
最初は、CBI学会の理事らICAとが相談し、その知り合いに、この会の趣旨を説明して、その中から協力してくださる研究者を集めていく、というやり方をとる。
8.事務局スタッフ
この会は、簡素な会であり、あまり事務処理は発生しないが、一応、連絡役はICAの事務局スタッフを予定している。